11版からマジック2010へ

確かに、現在の基本セットはかなり微妙な位置付けだ。

2chなんかで「MTG始めようと思っています。何を買えばいいですか？とりあえず10版を買おうと思うんですが。」なんて書き込みがあれば「やめておけ」と言われる存在になってしまっている基本セット。
《神の怒り》のような一部の強力カードがあったり、色々なカードが次の基本セットに採録されるとわかっていても、薦められる事の無い基本セット。
エキスパンションに比べ、現在の基本セットは全体のカードパワーが低いことが、1度でもMTGをプレイしたことのある人間であればわかっていることだから。



アルファからスタートしたMTG。それを基本セットとし、アラビアンナイトと言う拡張セットが作られた。基本セットを中心にし、その基本セットを強化するサポート役として拡張セット作られた。

そして色々なカードセットが出されるにつれ、ルールを設けないと資産を持っている古参が有利なゲームとなることがわかる。そこで現在のスタンダード(T2)が作られる。

しかし、ここでカードセットとルールと企業にズレが生まれることに気付くはずだ。
基本セットが主役、拡張セットが脇役。
確かに理想的に見える。しかし、強いカードが基本セットに採録され続ければ、どんなフォーマットを設けたとしても、結局は昔からの資産を持っている古参が有利なゲームは変わらない。そうなれば、当然新参は高い壁を感じることになる。もちろん苦肉の策として、禁止カードや制限カードを設けるのも手だろう。しかし、販売中のパックに禁止カードが入っているこが及ぼす影響は、説明する必要も無いだろう。しかも、基本セットが強いままであれば、古参はカードを買う必要は無く、当然拡張セットを買う必要性も低い為に、売上にも繋がらない。

企業はパックが売れ、利益が上がることで初めて成り立つ。

基本セットのカードパワーを下げ、拡張セットのカードパワーを上げる。ある意味、当然の成り行きとも考えられる。

逆にカードをばら撒きまくり、カードそのものの価値を下げてしまえばどうか、という意見もある。レアリティを無くし、《Black Lotus》がコモンのように出回る。高くても1枚10円。ゴミ箱に捨ててあるようなカードしか入っていないパックを、誰が買うのだろう？そんな事をして、会社の利益はどこから出るのだろう？

不景気の中、ユニクロやマクドナルドのような低価格商品を売りにしている会社が利益を伸ばしている。しかし、薄利多売を行っていたダイエーが危機的状況に陥ったことがある。一方、不況の中でも東京ディズニーリゾートのように、低価格ではないにもかかわらず順調に伸びている会社も多くある。不況に強いとされていた高級化粧品の売れ行きが悪くなり、家族の一員と認識されるようになったペット関連は外から見れば生活必需品とは言えないのに順調だ。世界のトヨタを始めとする世界中の自動車会社が危機的状態に陥っている中、超高級スポーツカーしか造らないフェラーリが増収増益で過去最高を記録した。販売不振で1969年にフィアット傘下に入ったフェラーリが、なぜこの不景気の中で過去最高の利益を出すのか。

MTGに関して「値段が高いから売れないんだ。値段を下げろ。値段を下げなくても、もっと違う形で還元しろ。」と言う短絡的な意見は、頭の悪い馬鹿が言うこと。もちろん、そういうことがプラスになる場合も多くある。しかし、プレイヤー人口が10億人になったとしても、それとwotcの経営が順調に行われることはイコールではない。商売の相手が100人しかいなくても、しっかりと商売を行っている会社も多くある。

庶民なんて相手にしていないフェラーリ。庶民しか相手にしないマクドナルド。どちらも両極端な話しだし、TCGとは業種も業態も製造コストなんかも全く違う。
しかし、「値段が高い、安い」「売上枚数、売上高が上がる」と言うのは、大げさに言えばどうでも良い。もちろん売上高が多ければ銀行からの融資が受けやすい、と言うような別の側面はある。
しかし、値段を下げることにより販売数が多くなっても、値下げした以上の効果が生まれず赤字が大きくなるのなら、値下げなんて全く意味が無い。確実にwotcは潰れる。また、値段を上げても売上が伸びず赤字が大きくなるのなら、値上げなんて全く意味が無い。確実にwotcは潰れる。

品質を下げても、パック代を今より100円下げた方が良いのか。逆に品質を上げ、購入する人を限定的にして1パック3000円にした方が良いのか。
購入側だけでなく、開発コスト、製造コスト、流通コスト、一般管理費、などの様々な企業側の問題もある。

様々なことがわからなければ、その企業を批判することは難しい。

ただ、基本セットだけで考えれば、製造すれば製造するほど赤字になることは容易に想像できると思う。


そして、今回の販売サイクルの変更にしても同じだ。回転を早くしたほうが良いのか、遅くした方が良いのか。


ここまで色々な事を書いたが、俺の考えは「今回の変更が、どうなるかよくわからない」だ。coinのテキトウさが良く分かる。



coin自身のMTGとの付き合い方は、特に変わらないと思う。

パックはリミテッドで遊ぶもの、リミテッドで集まらなかった構築で使うカードはシングルで買う、に影響はほとんど無いから。
影響があるとすれば、プレイヤーの人口が減りデュエルする機会が減る、何てことが考えられるが、それほど大きな影響は無いと思ってる。あと、半分は新しいカードといっても、基本セットのリミテッドをやると持ってるカードを引いてしまう可能性が高くなる、くらいか。

一番影響の大きなスタンダードに関しても、特に変わらないと思う。
色々な情報を調べ、自分の持ってるカードと相談しながら、「できるだけ負担が少なく、高勝率のデッキを1つ選ぶ」が基本だから。エキスパンションの回転が早くなっても、きちんと情報を集めて特定のカードだけを集めれば、それほど今までとは変わらない。それにデッキを組むなら、やはりスタンよりレガシーの方が楽しい。「スタンで色んなデッキを組みたい」「メタを考え、常にスタンの大会で優勝を目指したい」と言う気持ちが皆無だから、今のスタンスができているのだろうけど。





MTGの起源であるにもかかわらず、存在価値のなくなってしまった基本セット。変更の中身は別として、大きな改革を行ったという行為は評価している。今回の変更が、どのような影響を与えるのだろうか。